
文芸美術国民健康保険とは
文芸美術国民健康保険組合(ぶんげいびじゅつこくみんけんこうほけんくみあい)は、美術・映画・写真・イラスト・WEBデザインといったデザイン業を事業としている個人が加入できる国民健康保険組合です。
文芸美術国民健康保険に入るメリット
文芸美術国民健康保険に入る最大のメリットは、保険料が収入によらず一律であるということです。
一般的な市町村の国民健康保険は、収入が大きければ大きいほど、保険料が高くなります。
私も一度、痛い目を見たことがあります。
何の税金対策も行わずに放置していたところ、まさかの年額70万円を請求されてしまいました・・・!これは非常に痛い出費でした。
文芸美術国民健康保険であれば、組合員は一律19,600円/月(2019年4月現在)のため、年額にすると235,200円となります。
つまり、私の場合は年額70万円を請求された時点で文芸美術国民健康保険に加入できていれば、保険料を半額どころか三分の一にまで節約することができたわけです・・・
市町村の国民健康保険料は自治体によっても違うため、一概には言えませんが、年収500万円を超えてきたあたりから、文芸美術国民健康保険に加入した方がお得になるケースが多いのではないでしょうか。
デメリット
文芸美術国民健康保険に入るデメリットは、審査が厳しいということです。
完全にデザイン業一色で生計を立てているのであれば何の問題もありませんが、WEBデザイン業でコーディングやサーバーの保守対応などもやっている場合などは、収入のうちどの程度がデザイン業で得た収入なのかを申告し、厳正なる審査の上で加入の可否が決定されます。
以前はもっと簡単に加入できていたようですが、近年組合員の増加に伴い、審査が厳しくなってきている様子でした。
文芸美術国民健康保険へ加入するまでの流れ
事前準備
まずは、加入条件を確認しましょう。
文芸美術国民健康保険の加入条件
- 日本国内に住所を有していること
- 文芸、美術および著作活動に従事していること
- 組合加盟の各団体の会員であること
- 個人であること
- 後期高齢者でないこと
文芸美術国民健康保険に加入するには、組合加盟の団体に所属している必要があります。
組合加盟の団体一覧
私の場合はWEBデザインやDTPデザインを行なっていますので、JILLA(日本イラストレーション協会)という団体に加入することにしました。
JILLAへの加入の流れ
加入条件の確認
もちろん、JILLAにも加入条件があります。
基本的にはデザイン業を行なっている方であれば加入できます。
ただし、加入申し込みの際に提出が必要な前年度分の確定申告書の控えで、職業欄が空欄であったり、「自営業・自由業・フリーランス・サービス業・著述業・クリエイター」といったような、業務内容が特定できない状態になっていると加入ができないようです。
ネットから申し込み
加入条件を確認したら、公式サイトの加入申し込みます。
以下のページから、住所氏名などを入力して加入申請を行います。
メール
申し込みが完了すると、加入申し込みを受け付けた旨と、近日中に加入申し込み書を発送するという内容のメールが届きます。
郵送書類の確認と返送
その後2日〜1週間くらいで、JILLAヘの加入申し込み書一式が入った封筒が郵送されてきます。
封筒の中には、以下の書類が同封されています。
- 送り状
- JILLAのパンフレット
- JILLA加入申請の流れを説明する用紙
- 加入申請および出資引き受け書
- 加入申請書記載例
- 事業実績添付用紙
- 加入審査についての説明用紙
- 加入できる職業名一覧書
- 出資金/賦課金の納入方法の説明書
- 出資金/賦課金の見積もり計算書
- 文芸美術国保へ加入する人への案内
- 文芸美術国保の加入資料請求書
- 返信用封筒
このうち、返送が必要になるのは以下の書類です。
- 加入申請および出資引き受け書
- 直近の確定申告書(B)控え(第一表のみで良い)のコピー
- 事業で制作した作品などのコピー
- 事業実績添付用紙
- 文芸美術国保の加入資料請求書
JILLAに加入するには、加入手数料(3,000円)と、出資金として最低5口(1口5,000円)と賦課金(2,000円/月)、文芸美術国保へ加入する場合は事務手数料(3,000円)が必要になります。
賦課金は基本は年額払いなので、初回は加入した月〜3月分までの金額が請求されます。
私の場合は、3月に加入を希望しましたので、
加入手数料(3,000円)
+出資金(25,000円)
+賦課金3月分(2,000円)
+文芸美術国保加入手続き事務手数料(3,000円)
=33,000円
という計算になっていました。
加入審査に通ったら、こちらの金額を速やかに振り込む必要があります。
「事業で制作した作品などのコピー」は、A4などの用紙にいくつかの事例をピックアップして貼り付け、それぞれが何の制作物なのかも一言添えておくと親切でしょう。
また、返送資料に「文芸美術国保の加入資料請求書」がありますが、この時点ではまだJILLAの加入も確定していませんので、文芸美術国保への加入申し込み手続きは取れていません。
「文芸美術国保の加入資料請求書」は、審査が通った際に、改めて加入申請書を送ってもらうように依頼するためのものです。
加入審査結果のメール
書類一式を送ってから1週間ほどでJILLAから加入審査結果についてのメールが届きます。
振込み
無事、審査を通過した場合は、速やかに出資金/賦課金を振り込みます。
振り込み確認メール
振込が確認されると、JILLAから確認が取れた旨と、出資金等の受け取り証やJILLAの会員証に同封して、文芸美術国民健康保険加入申込書を発送するというメールが届きます。
証書、文芸美術国民健康保険加入申込書
数日〜1週間くらいで、JILLAから出資金等の受け取り証、JILLAの会員証(カードとかではなく紙です)、そして文芸美術国民健康保険加入申込書と記入例が同封された封筒が郵送されてきます。
この時点でJILLAへの加入は完了となます。
文芸美術国民健康保険組合への加入の流れ
文芸美術国民健康保険加入申込書の提出
JILLAから送られてきた文芸美術国民健康保険加入申込書に必要事項を記入し、以下の書類と合わせてJILLAに返送します。
- 文芸美術国民健康保険加入申込書
- 直近の確定申告書(B)控えのコピー
- 確定申告書の年度内に発行した請求書または領収書数枚(確定申告書(B)第二表の所得の内訳が空欄の場合)
- 事業で制作した作品などのコピー
JILLA加入の際は確定申告書(B)控えは第一表だけでしたが、文芸美術国民健康保険では第一表と第二表の両方が必要になります。
特に、第二表の「所得の内訳」が空欄になっている場合は、提出する確定申告の年度内に発行した請求書または領収書を何種類か添付する必要があります。
審査の項目として、「どんな相手に」「何の事業で」「いくら収益が発生したのか」を見るため必要だそうです。
受取のメール
JILLAから、書類一式を受け取り、文芸美術国民健康保険の事務局に提出した旨のメールが届きます。
書類に不備があった場合などには、電話やメールで確認されることがあるので、対応してほしい(迷惑メールに入ってしまって気付かず、加入が遅れるケースがたまにあるようです)とのことでした。
私は電話で確認がありました。
ちょっと特殊な料金体系だったものですから、それを説明したところ、すでに提出済みの書類だけで審査を行うことができるので、しばらくお待ちくださいとのことでした。
仮に不備があったり、足りない書類がある場合は追加の提出が求められることがあるようです。
文芸美術国民健康保険の審査
文芸美術国民健康保険の審査は、毎月5日に行われるようで、審査に合格すると、翌月1日から保険が適応となります。
私の場合は、3月にJILLAに加入申し込みを行い、3月中に文芸美術国民健康保険への加入申し込みを依頼、4月5日に審査があり、4月10日ごろに通過の電話がきて、5月1日から保険適応となりました。
文芸美術国民健康保険へ加入したいと思ったら、最低でもだいたい2ヶ月くらい見ておいた方が良いでしょう。
保険証の郵送
審査に合格すると、保険証が郵送されてきます。
翌月から届いた保険証で医療機関にかかることができます。
保険証が届いたら、現在加入している健康保険の脱退手続きを取ることも忘れないようにしましょう。
審査通過のポイント
まずはしっかりと「加入条件を満たしているか?」を確認しましょう。
- 日本国内に住所を有していること
- 文芸、美術および著作活動に従事していること
- 組合加盟の各団体の会員であること
- 個人であること
- 後期高齢者でないこと
文芸美術国民健康保険の加入審査では、「書類の表記がデザイン業になっているか?」ではなく、「業務の実態がデザイン業に従事していると言えるかどうか?」を丁寧に審査している印象を受けました。
そのため、業務の実態がほぼコーディングやシステム開発、保守といったデザインに関係がない内容である場合などは、加入は難しいでしょう。
「デザインもコーディングも両方やっている」という場合は、作品例や事業としてどういった比率・料金体系で収益を得ているかをしっかりと事務局に伝えることができれば、その内容に応じて審査に通過することができるでしょう。